「ひとつだけアドバイスをあげるよ。総務部の渡辺さんに相談してみてごらん。彼女、相当顔が広いようだからきっと何とかしてくれると思うよ」
佐藤さんの話によると顔が広いだけでなく正義感も強いようだから、後輩がいじめまがいの酷い目に合っていると知ったら活躍してしてくれそうだ。
(そろそろ良いかな……)
俺は資料室のファイルをいくつか持ち出すことを決めると、椅子から立ち上がった。
さっさと戻らないと今日も残業になって佐藤家に寄れなくなってしまう。
「あの!お名前を伺っても宜しいですか?」
「営業部の鈴木です」
すっかり泣き止んだ関谷さんはありがとうございましたと言って頭を下げたのだった。