「お疲れ様」
そう言って、水道で顔を洗っている櫂くんにタオルを差し出す。
練習試合は紺色のユニフォームチームの勝利で幕を下ろした。
チームメイトが勝利に沸く中、彼はひとり離れて校舎の陰に隠れるようにして身支度を整え始めていた。
「シュート、格好良かったよ」
「それは、どうも」
櫂くんは俺の差し出したタオルを受け取って顔を拭いた。
櫂くんが試合終了直前に放ったシュートは見事、相手チームの堅い守りを崩し、ゴールへと吸い込まれていった。放物線の軌道の見事さに俺達は熱狂した。
そのゴールが決勝点となったのだった。
「双子とひろむは?」
「チームメイトと一緒にいるよ」
「そう」
櫂くんは俺に構わずユニフォームを脱いで、大きめのボストンバッグから練習着を取り出すと素早く着替えだした。



