愛を欲しがる優しい獣


(家ではこんな感じなのに……)

ポイモンで遊んでいる会話を少しだけ盗み聞きする。

「あ、陽くんそのアイテム頂戴」

「やだ」

「良いじゃん。これと交換して!」

「むり!」

小学生にトレードを断られて本気でへこんでいる鈴木くんは、会社の人にはとても見せられそうにない。

鈴木くんにばれないように笑みをこらえていると、予定を確認していた樹が急に私に向かって両手を合わせた。

「ごめん、姉ちゃん!俺、その日バイトだ」

「え!?バイトっていつも日曜じゃなかったっけ?」

謝り始める樹を見て、己のスケジュール帳を確認する。日付と曜日を指で辿ると、間違いなく土曜日ではなく日曜日に印が付いていた。