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「ということで、ちょっと来週の土曜日は出掛けたいんだけど構わないかしら?」
「土曜日、土曜日っと……」
樹はそう言いながら携帯の予定帳を検索し始めた。きっと己の予定を確認しているのだろう。
「珍しいね。渡辺さんと?」
「うん。椿と後輩の関谷さんと」
双子とポイモンに興じている鈴木くんの隣で家計簿をつけながら答える。
「関谷さん?」
「知らないの?総務部に7月に配属された新入社員よ。すっごい美人なんだから」
まさか関谷さんを知らない男性社員がいるとは思わなかった。
なにせ彼女を一目見ようと一時は総務部の前に長蛇の列ができたくらいだ。
「そうなの?」
これだから社内一の人気者は困る。
きっと、鈴木くんにとっては誰が美人で、誰が可愛いかという情報は取るに足らないことなのだろう。
……黙っていればあちらから寄ってくるから。
それともこの余裕が人気のひとつなのか。



