愛を欲しがる優しい獣


「父親に捨てられたんだ」

「何を?」

「俺が集めていたゲームと戦隊ヒーローグッズ」

……とても嘘をついているようには見えなかった。言葉の節々から未だに怒りが収まっていないことが感じられる。

私はあんぐりと口を開けてしまった。予想外も予想外だったのだ。

「まさか……それだけ?」

「だって酷いだろう!無断でひとの部屋に入っておいて、邪魔だからって全部捨てたんだよ、あの人」

私はほんの少しだけ鈴木氏に同情した。

彼の趣味に対する熱意は知っていたから、鈴木氏が息子の身を案じたのは無理ないと思う。

ただ、やり方がまずかった。おそらく、考えうる中でも最も悪い方法だった。

……そんなことをされて鈴木くんが黙っているはずがない。