愛を欲しがる優しい獣


「彼があなたのお話を断ったのならそれはきっと、お父様に自分がついていなくても大丈夫だと判断したからでしょう。現に、お父様の行く末を心配されているあなたがこうしていらっしゃいますもの」

政治家の秘書なんて仕事は仕える相手を本当に尊敬していないと出来ないと思う。

だから、きっと鈴木くんの力を借りずとも、良い結果が得られるのではないだろうか。

「私は彼の意思を尊重したいと思います」

私は改めてこの話を断った。

すっかり冷えてしまった紅茶を一口で飲み干す。

「ごちそうさまでした」

そろそろ帰らないと我が家の小さい怪獣たちが本格的に冷蔵庫を荒らしかねない。

椅子から立ち上がって、荷物を持った私に小林さんが声を掛ける。