愛を欲しがる優しい獣


目尻に溜まった涙を拭いながら、最後に小林さんに尋ねてみる。

「あなたは代々政治家を輩出している名家だから、鈴木くんのお父様の秘書になられたのでしょうか?」

今度は小林さんが目を見張る番だった。

「鈴木くんは優しい人です」

たとえ小林さんが言うような一面を持っていたとしても、私にとって鈴木くんは優しくて、強い人だ。

横領事件の時だって、彼は決して挫けなかった。傷ついて、怒りを内に秘めて我慢してばかりで、誰も恨もうとしなかった。

私はごめんと謝る彼を抱きしめながら思ったのだ。

……守ってあげられたらいいな、と。

鈴木くんが、私が大事にしているものを大切に思ってくれているように、私も彼が大事にしているものを守ってあげたい。