「単刀直入に言います。家に戻るように貴士さんを説得して頂けませんか?」
政治家の秘書ならではの率直な物言いについ面喰ってしまうが、呆けている場合ではない。
押されてなるものかと、負けじと言い返す。
「……彼はあまり家が好きではないようですが」
なぜ私の所にやって来たのか、ようやく合点がいった。
……小林さんは鈴木くんを連れ戻しにやって来たのだ。彼の意思を無視して。
そして、自分の目的のために私を利用しようとしているのだ。
「鈴木家は代々、政治家を輩出している名家です」
「ごめんなさい。政治はあまり興味がなくって、歴代の総理の名前ぐらいならわかるんですけど……」
どの議員がどんな出自かなんていちいち覚えていられない。取り繕ったところで、どうせすぐばれてしまうのだからと正直に答える。



