「あなたは、ご自分を過小評価されてらっしゃいます」
「あなた方は俺を過大評価し過ぎだと思うけど」
昔からそうだ。この人達は俺を買いかぶりすぎている。
期待に応えようと頑張っていた時期もあったけれど、過剰なプレッシャーはそつのない処世術を学ぶ肥やしにしかならなかった。
家から出た俺に残ったのは結局、戦隊ヒーローマニアというアイデンティティだけだった。
「とにかく、家に戻るつもりはないから」
不毛な言い争いはしばらく続いた。
家に戻る気はない俺と、是が非でも家に戻ってもらいたい小林さんが、皮肉と説得の応酬を続けたところで互いの意思は変わらず決着はつかなかった。
「もう諦めてくれない?そろそろ行かないといけないんだけど」
腕時計を見れば、佐藤さんと別れてから既に1時間が過ぎていた。
早く行かないと、折角の鍋なのに食べそびれてしまう。
ため息交じりに告げれば、小林さんは怪訝な顔つきで俺を睨んだ。



