「佐藤も大変だな。良いのか?こんな腹黒い男が彼氏で。もっと優しい男の方が良いんじゃないか?例えば俺とか……」
(口数が減らない男だな……)
この男が静かになるのは寝ている時ぐらいのものだろう。俺は他人の彼女に粉を掛けようとする渉の脛を、椅子の下から思い切り蹴り上げてやった。
佐藤さんは苦痛に顔を歪める渉には気が付かずに首を傾げて答えた。
「え?鈴木くん、優しいよ?」
ほらな、と心の中で勝ち誇る。俺は満足げに口の端を上げて、蕎麦をすすった。
惚気に当てられた渉がはあっと悩ましげなため息をつく。
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