愛を欲しがる優しい獣


「もしかして、ふたりは付き合っているのか?」

俺達の会話に割って入るように、渉が身を乗り出した。

(何を興奮しているんだか……)

いい加減、鬱陶しくなってくる。

そもそもこいつが現れなければ、もっとゆっくり佐藤さんとの時間を楽しめたのに。

「文句ある?」

……文句があったとしても、聞き耳を持たないが。

堂々としている俺とは対照的に、佐藤さんが照れた顔を隠すように俯いた。

渉がうっと呻く。

「もう、嫌だ!何で鈴木ばっかり……」

もう何年も彼女がいない渉に憐れみを込めて言う。

「僻むなよ」

「僻んでねえよ!」

ギャーギャーと騒いでいる内に、注文した日替わり蕎麦が運ばれてきた。