「今日はありがとう。誘ってくれて」
「こちらこそ。ありがとう」
片手を上げてバイバイと手を振ると、ドアノブに手を掛けていた鈴木くんがおもむろに振り返った。
「佐藤さん」
忘れ物でもしたのかと尋ねようとすると、先に鈴木くんが口を開いた。
「俺に…幻滅しなかった?」
「……どうして?」
「俺って会社にいる時と全然違うだろう」
鈴木くんの顔を見上げていると、昼間とは打って変わって頼りなげに見えた。
どうしてそんなに不安そうにするのかしら。
瓶底眼鏡の奥の瞳がまるで泣いているように思えて、私はつい大きな声を張り上げた。