やってきたエレベーターに乗り込むと、佐伯くんが5階のボタンを押した。

会議室はこのビルの5階にある。佐伯くんは本当に監査部に鈴木くんの荷物を引き渡すつもりなのだ。

「なんで鈴木くんの荷物を……」

「さあ、何を調べるつもりなんだろうな」

どうせ何も出てきやしないのに、と佐伯くんが呟く。

私も同じことを思った。

「鈴木くんは不正なんて絶対にしないわ」

「鈴木は例の課長と一緒に出掛けることも多かったからな。監査部の連中も余計に勘ぐっているのかもしれない」

行き場のない怒りを言葉の節々に滲ませている私を宥めるように、佐伯くんは続けた。

「俺だって、分かっているよ。鈴木が無実だってことくらい。でも俺達にはどうすることも出来ないだろう?」

そう、私達に唯一出来ることは監査部の方々が公正な調査をしてくれるのを願うばかりで。

ひたすら自分の無力さを思い知るのだった。