ああ、数時間前の自分を殴ってやりたい。
もちろん、会社で彼女を引き留めた自分とスーパーでの間抜けな自分、両方だ。
「おまえゲームできる?」
「一応、ハードは全部持っているけれど……」
樹くんはポンとゲームのコントローラーを俺に投げてよこした。
「じゃあ交代な!陽!お前の相手だ」
「はあ?そいつ大丈夫なの?」
画面に映されているのはよくある対戦ゲームのようだった。
「いいから対戦しろよ。俺はもうお前の相手に飽きたんだよ」
それが真意ではないことは俺にも分かった。馴染めるように樹くんが気を遣ってくれたのだ。
(よかった。このゲームで)
俺はスタート音が鳴ると同時に、コントローラーを連打し始めた。