「佐伯くん!待って!」
営業部のフロアに行くと、段ボールを運んでいる佐伯くんを見かけて、その場に呼び止める。
「ごめん、佐藤。今、ちょっと手が離せなくて……」
「鈴木くんはどこに行ったの?」
間髪入れずに尋ねると、快活な佐伯くんには珍しく歯切れが悪かった。
「鈴木は……帰ったよ」
「まさか……自宅待機になったの?」
「これ、あいつのデスクの荷物。監査部の人に持ってくるように言われているんだ。手伝ってくれる?」
私は佐伯くんが持っていた紙袋をひとつ預かった。中にはこれでもかと言うくらいぎっしりと書類が詰められていた。
(これからどうなっちゃうのかしら……)
ぎゅっと紙袋を抱える。彼が会社で頑張っていた証の重さに胸が一杯になる。