「お仕事だから」
我が妹ながらいじらしくて抱きしめたくなる。陽に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ。
「お姉ちゃんと一緒に行こうね」
せめてものお詫びにと映画に連れていく約束をしたその時、鈴木くんの携帯から着信音が鳴った。
「ごめん、ちょっと外で電話してくるね」
発信元を確認すると、鈴木くんは家の外へと出て行った。
(会社からかしら……)
しばらくして通話を終えて戻ってきた鈴木くんはやれやれと頭を掻いていた。
「出張、キャンセルになった」
「じゃあ、明日は行けるの?」
「うん」
「良かったね、恵」
私は恵と手を取り合って、喜びを分かち合った。
「最近、多いんだよね。直前でキャンセルになるパターンが……」
携帯を見つめながらぼやく鈴木くんを尻目に、子供達は明日の予定をああでもない、こうでもないと語りだすのだった。