「あ、私も乾かさなきゃ」
シャワーを浴びて戻ってきた佐藤さんが俺を見て、真似して自分の服にドライヤーを当て始めた。
「先にこっちじゃない?」
濡れた髪のまま走り回る佐藤さんをベッドに座らせる。洗面所から櫛をとってくれば、彼女がクスクスと笑いだす。
「至れり尽くせりね」
彼女の背中に回って濡れた髪を一束とれば、ラブホテルの安っぽいシャンプーでもサラサラと音が聞こえそうなくらい滑らかな指通りだった。
慣れない手つきで髪を梳かして、ドライヤーを当てていく。肩甲骨まである髪が時折、指先をくすぐっていく。
「あとどれくらいで止むかしら」
「さあ」
「本当に何もしない?」
「何かして欲しいの?」
意地悪くからかうと、佐藤さんが拗ねた子供のように膝を抱えだした。