「ごめんなさいね。亜由は今、買い物に出掛けているの」

いつものようにインターホンを押して、出迎えを待っていると現れたのは香織さんだった。

「そう……ですか……」

「そろそろ帰って来ると思うから、待っていてくれる?」

そう言われてリビングに通されると、俺たちの他に誰もいなかった。

「他の皆は?」

「早苗と櫂は部活。あとは樹がまとめて市民プールに連れて行ったわ」

「そうですか」

(DVD持ってきたのにな……)

見たいと言われて録画しておいたホラー映画をテーブルの上に置く。

窓の外を見れば雲一つない良い天気で、佐藤さんが干したと思われるシーツが風に吹かれてはためいていた。

どこかで蝉が鳴いている。

世間の学生はすっかり夏休みモードで、佐藤家も例外ではない。