「さっきの鈴木くんって、もしかして亜由の彼氏?」
(もしかして、見られていたのかしら……)
玄関でされたキスを思い出して、赤くなる顔を隠すようにあえて素っ気なく答える。
「……どちらでもいいでしょ」
「あら、照れているの?」
私の気持ちなどお見通しだと言われているような気がして無性に腹が立ってきた。
「もう!!どうして突然帰ってきたの?」
元はといえば、お母さんが突然帰ってきたのが悪い。
「運転免許を更新しなきゃと思って」
お母さんは運転免許証をバッグから取り出して私に差し出した。
免許証を見て、頭が痛くなってくる。
「これ、更新期日過ぎていない?」
「うーん……やっぱり?」
(“やっぱり?”じゃないでしょうが……)
私はその夜、運転免許証の再発行手続きについて慌てて調べたのだった。