(調子が狂うったら……)
それは樹も同様だった。
先ほどから会話に参加せず、終始無言で皿を拭いているのはそういう理由だ。
早苗と櫂は既に床に就いたのだろうか。
「そちらの方はどなた?」
一緒に帰宅した鈴木くんを見て、首を傾げた。
お母さんの登場したことで、鈴木くんの存在をすっかり忘れていたことに気が付く。
「初めまして、鈴木です」
「ご丁寧にどうも。初めまして、亜由の母親の香織です」
「鈴木くんは、会社の同僚なの」
ただの同僚がどうして我が家にいるのか、細かい説明はあえて省く。質問攻めにされたら面倒だと思ったからだ。
「俺、今日は帰るね。家族水入らずを邪魔したら悪いし」
「そう……?」