「返事を聞かせてくれる?」

考えずとも答えはひとつしかない。

「……私でいいの?」

鈴木くんなら女性など選り取り見取りだというのに。

よりにもよって地味で平凡な私を選んでしまってよいのだろうか。

この期に及んで躊躇うと、鈴木くんは頬を赤く染めて言うのだった。

「佐藤さんがいい」

子供のように拗ねたこの表情を見られるのはきっと私だけだろう。

「……ずっと好きだった」

耳に届く愛のことばは甘く切ない響きを伴っていて、鈴木くんの想いの強さを思い知る。

いつか彼に同じ愛のことばを返すことが出来るのだろうか。

「帰ろう、きっと皆、心配しているから」

「家に帰ったら、あげたいものがあるの。受け取ってくれる?」

「もちろん」

鈴木くんは喜んでくれるだろうか。

自然に差し出された手を握る。

今はただ、このぬくもりを手放すことにならずに済んで安心している自分がいるのだった。