「泣いてません…」
すると私のおでこに要さんの唇が触れた
固定されていた手は解かれ、私の背中には要さんの腕が回ってきた
「離して…」
何の気まぐれだろう
要さんの温もりが今は心地良い
「もうすぐ飯の時間だ
中川が呼びに来る
一緒に食いに行こう」
私と要さんの身体は離れて、私の手を要さんが絡めとった
「返事がないということは、このまま連れて行くぞ?」
いつもなら嫌がるのに、その時だけは嫌ではなかった
ずっと強がっていたけど、本当は誰より人の温もりが欲しかったのかもしれない
小さい頃から、親との思い出は少なかったし1人でいる時間が多かった
無意識で要さんの背中に抱きついた
「…どこにも行かないで」
その大きな背中は温かくて、私の身体ではすっぽり隠れてしまうほどに