「や、やめてっ…」
「あ?何生意気言ってるの?えらそーに」
声を上げても、何度も何度も蹴られて殴られて……。
助けを求めてもまた違う子にそれを潰されて、それの繰り返し。
「また遊ぼうね。くれぐれも死なないでね」
にやりと笑いながら、倉庫を出て行く。
誰にも気づかれず、誰にも届かない私の声……。
『自分がこうだからダメだったんだ。自分のこの性格のせいで…』
中学の三年間、ずっとこうだったため自分まで変わってしまった。

「おい、水城。お前高校どうするんだ。何も提出書類出てないけど…。ふざけてるのか?」
先生に呼び出される。
書類もちゃんと書いた。でも毎回出すところであの子達に奪われる。
「別にふざけてません。まだ行きたいところがなくて…」
「珍しいな、お前が決まってないとか。どんな高校がいいんだ?」
先生のこの質問が自分への助け舟となる。
「ここの人たちがあんまりいないところがいいです。できれば寮制で…」
無理難題を言ったと思う。
けど、ここで逃げ場を作らないといけない。
「ん~。そんな高校あったかな。ちょっと待っててな」
パソコンを使って調べる。
「いったいどうしたんだ?何かあったか?」
「え?」
思いがけない質問だった。
何度も何度も助けを求めても届かなかった気持ちが…。
「…っ。……なんでもありません。大丈夫ですよ」
「そうか、何かあったら言えよ?」
「は、はい」
怖かった。ただただ怖かった。
言ったらまた見返りがくるだろう。
言ったらもっと暴力が増えるだろう。
言ったら今度こそ………



自分が死ぬのではないか


「あ、あったぞ。お前が行きたそうな高校」
「えっ…」
そこにはひとつの高校の名前が上がっていた。
「私立じゃ高いだろうって思ってな。公立の高校で探したら、ちょうどあったんだよ。陽太高校だ。偏差値は少し高いが、お前なら推薦でも行けるだろう。どうする?ここでいいか?」
「はい。お願いします」
目から涙が流れていた。
やっとこれで一息つけるのだろう。ここで過ごせば自分を作りなおせる。
こんな居づらい場所からも開放出来る。
「水城大丈夫か?合格できるか心配なのか?」
「…ま、まぁ。」
「まぁ、お前の元気なその性格なら合格できるさ」
『この「性格」で……?』
一気に安堵した自分がバカバカしくなった。

こんな自分変わればいい。
逆の性格になればいい。
せめて、高校に行くまでの我慢だ。
「はい…。頑張ります」
職員室から出て行くと、またいつもの子達が待っていた。
「何も言わなかっただろうね」
「うん」
「ならいいけど。言ったらわかってるよね?」
「うん」
それだけ確認しに来たのだろう。
そう言って笑いながらどこかへ行ってしまった。

もう少し…
もう少しの我慢だ。

こうして私は変わっていってしまった。