「はぁ…
またこんにゃく料理よ。さすがにこんなに 作られたら飽きるよ。」
僕は、台所で料理を振る舞っている彼女に言った。最近はこんにゃく料理にはまっているのか、これで3ヶ月の三食すべてにこんにゃく料理がある。
「しっ、仕方ないでしょっ!!
こんにゃく料理美味しいんだもん。少しぐ らい我慢してよ~。」
と言いながら、顔を赤くした。付き合ってからもう5年経つがこんなことが何度あったことか……。でも、彼女の料理は誰の料理を食べても一番美味しい。彼女だからとかじゃなくて、付き合う前から美味しかった。
「もう……
しょうがないな。その代わり、期待してる からな。」
と言って彼女の頬にキスをする。すると彼女は顔を赤くしてこちらを見る。ニコッと笑顔を見せて仕事に行く準備をする。
「は、はい
これ、今日のお弁当。
今日もがんばってね。」
彼女はお弁当を差し出す。でも顔はさっきと変わらず赤いままだった。
「いつもありがとう。今日も頑張るよ。」
彼女の頭をなでる。やっぱりかわいいな。
「じゃいってきます。」
いつものことをやってから家を出ていく。
「………っっっ。
もう子供なんかじゃなーーーーい!!!」
やっぱりかわいいっ……!!!!!

僕はとある工場で働いている。そこの工場では、今人気のアルパカ人形を作っている。僕はその企画・開発担当だ。
「おはようございます。」
仕事場に入ると、他のやつらが声をかけてくる。
「おはよう。
今日もこんにゃく弁当か??
彼女さんも相変わらずだなっ」
むっ…。いつも『美味しい、美味しい』満足そうに言ってるじゃないか。
「あ、はい。
別にいいんですよ。彼女が楽しんでくれれ ばそれで。」
そいつに向かって、笑顔を振りまくが心の中では自慢をしていた。
「ふ~ん。
まあ別にいいんだが。
あっそういえば、君が言っていた例の企画 のこと。上のお偉いさん方はこころよく引 き受けてくれたよ。」
「ほっ、ほんとですか!!!!」
「あぁ
さっそく始めていこう。」
これで彼女に今まで伝えたかった事が伝えれる。これできっと彼女と今まで以上に過ごしていけるだろう…。これで、きっと……。

クリスマス前日、僕は彼女に
「明日は出掛けよう。せっかくのクリスマス だからね。〇〇の店のまえで待っていて。
 明日、仕事を終えたらそこに行くから、先 に待っていてくれないか??」
「ほっ、ホントにいいの??」
彼女が驚きながら聞き返す。
「あぁ。
その代わり、今日は仕事場で残って仕事を してくるから、我慢してな?
じゃ、いってきます。」
彼女は笑顔で僕を見送ってくれた。

しばらく歩いていた時だった。横断歩道を渡っているとき、目の前の子供がつまずいて転んでしまったのだ。
「大丈夫か??」
と子供の前でしゃがみこむ。すると車がこちら側に曲がってきた。トラックだから、しゃがんでいる僕らが見えないんだろう。そのまま車が渡ってくる。
「あ、危ないっっっ!!!!!!!!」
すぐさま子供を押すと僕はトラックとぶつかった。

あぁ…。もう何もかも終わるんだな。
何も彼女にしてやれなかった。
もう二度と彼女に会えないのか。


………ごめんな。



「………っっ!!!!
……きてっっっ!!!!!!
お願いだから、起きてっっ!!!!!!」
ここはどこだ。僕は目をあける。目の前には白い天井が広がる。
「ここは…どこだ……。」
すると彼女が目を赤くしながら僕を見てきた。
「病院だよ
仕事行く途中にトラックと事故にあった んだよ。」
あぁ…。思い出した。僕は子供を助けようとして……。いやそんなことじゃない、今何日だ。
「なぁ。
今日は何日なんだ…」
彼女が、赤くした目をを擦りながら寂しそうに答える。
「2…26日…。」
「26日……。
僕は……。そんな…。」
ふと横をみる。僕の鞄がおいてあった。
「なぁ…
僕の鞄を開けてみて。」
「えっ??」
彼女は不思議そうな顔をしながら鞄を開けた。するとなかからピンクのアルパカが出てくる。その首には袋がぶら下がっていた。
「これって……」
「袋開けて。」
なかから赤い小さな箱が出てきた。
「これって……。」
彼女が目を白黒させた。
「本当は昨日渡したかったんだ。
でもこんなんになったからさ…。
今までありがとう。これからも、僕と一緒 になってくれるか??」
すると彼女は涙を流しながら
「こちらこそっっ。」


僕が考えた企画。それは、ピンクのアルパカを作ること。今までは白いアルパカしかいなかったが、その子にガールフレンドをつくるってあげる。
なぜそんな企画をたてたかと言うと、工場の売り上げをあげる事が目的じゃない。実際のところ、ピンクのアルパカを考えたのは彼女だ。それを商品化させることが本当の目的。
病院で渡したピンクのアルパカは、初めて作られたらピンクのアルパカだ。
何もかも助けられてきた僕だが、彼女なしでは生きていけないだろう。これからも彼女と一生を進んでいこう。
それが僕の幸せだから……。

〈END〉