ふたりだけのDestiny




「お姉ちゃん、ちょっと席外すね?」

あたしが小声で言うとお姉ちゃんは、煙草を吸う手を止めた。

「どした?気分悪くなった?」

「うん…。ちょっと…ね。」

「大丈夫?外の空気でも吸ってくる?」

「そうしようかな。」

あたしは心配だからついていくというお姉ちゃんを断り、お店の外に出た。

「……ふぅー」

うぅ……。

冷たい風が鳥肌を立たせるような、季節になったな。

だけど、冬の澄んだ空気はやっぱり気持ちいいねぇ!


しばらく深呼吸していると。

「ねぇねぇかーのじょ。今一人?
ちょっと俺たちと遊ばない?」

「へっ!?……
あっ!ちょっと!止めてくださいっ!!」

「いいじゃん?今一人なんでしょ。だったら、俺たちと遊ぼうよ」

3人の男に囲まれてなんだか嫌な予感…。

「ちょ…っちょっとっ!」

過去に痴漢男を見事撃退したあたしでも、さすがに男3人には敵わない。

でも、なんとかしなきゃいけないからあたしは抵抗を諦めなかった。

すると。

「何やってんの?」

明らかに怒っている声が後ろでしたと思ったら、あたしの腕を掴む男の力が途端に弱くなった。

「あぁ!?お前誰だよっ!」

「悪いけどコイツ一人じゃないんで」

「あ?…んだよ、男いんのかよ。つまんねぇの」

と、イラつきながら去っていく男たち。

「明日香ちゃん!?」

あたしは、へなへなと神楽さんに倒れ込んでしまった。

「ぉっ…。ちょ…大丈夫か!?」

何度目かの呼び掛けで、あたしはやっと我に返った。

「……っ!!!ご、ごめんなさいっ!!///」

「あ、あぁ、俺はいいんだけど、それより何もされてないか?」

「あ、はい…。大丈夫です。」

あたしがそう答えると、神楽さんは溜め息をついた。

「明日香ちゃん隙見せすぎ。明日香ちゃんみたいな子はさっきの奴等の大好物なんだよ。いいか?俺以外の男にはもっと警戒心をもて」

「…………はぃ…。ごめんなさい……。」

多分、違うと思われることを言われ、どう返事していいかわからなかったので、とりあえず謝った。

「もうさ、明日香ちゃんさそろそろ自覚しようか?」

「……自覚?」

あたしが考え込んでいると、いきなり目線を合わせられた。

「っ……!!!!」

ち、近い……!!!!

限りなく………………////

「…自分がかわいいってこと」

「……!!!!」

なんでそーなんのよ!

「///か、神楽さんこそ、自覚してください!」

あたしが照れ隠しの為にそう言うと、神楽さんは首を傾げた。

「俺が?何を?」

「さ、さっきの人たち、神楽さんだって気付いたと思いますッ!国民的アイドルが女といたって流されるかもしれないんですよ?
そんなことになったら大変じゃないですか!」

あたしの機関銃みたいな言葉攻撃に、ピクリとも動じず、逆に面白がってるような目であたしを見てくる。

「……それって、心配してくれてんの?」

「そうですっ!JADEさんがそんなことになってほしくないからです!ましてや神楽さんは世界でも活躍されてるのに……。もっと、自分の立場を自覚してくださいっ!」

言い終わった後、少し言い過ぎたかなと思って思わず俯いた。

「……明日香ちゃん」

神楽さんに呼ばれ顔を上げると、神楽さんからさっきみたいな面白がるような笑みが消えて、優しく見下ろしていた。

「そこまで思っててくれたんだ。」

「…ぁっ、いや、あたしはただ……」

「サンキュ。
でも俺、疲れたんだよね。自分の立場気にして変装して出掛けたり、正体隠したりするの。」

「ぇっ、?」

神楽さんの言っている意味が分からなくて今度はあたしが首を傾げると、ふふっと神楽さんは笑った。

「…今の俺はプライベートの神楽和仁だよ。林の妹だからかなー、明日香ちゃんの前でも普通にいられる。」

「??????」

あの、ますます意味が分からないんですけど…。

あたしが聞き返そうとした時、後ろから名前を呼ばれた。

「明日香?和?大丈夫?」

「お姉ちゃん…。」「林…。」

「どうかしたの?」

お姉ちゃんがあたしと神楽さんを交互に見ながらそう聞くと、あたしの代わりに神楽さんが別に、と答えた。

「そう。あ、明日香は大丈夫?」

「あ、うん。もう大丈夫」

「…林は、明日香ちゃんが外にいるって知ってたのか?」

「え?うん。気分悪いから外に出るって。
なんで?」

「いや、なんでもねぇ。」

「あっ!そうそう、これから二次会なんだけど、和いくか聞きたかったのよ」

あたしたちは、とりあえずお店の中に戻った。

「和どうする?」

「あー…俺はいいや。明日も早いし。」

「そう……。明日香は?帰る?」

「うーん。帰ろうかな、色々疲れたし。」

あたしは、色々なものをバッグにしまいながら、そう答えた。

「分かったわ。
あっ、和。」

お姉ちゃんはあたしと帰ろうとする神楽さんを呼び止めて、何やらこそこそ話を始めた。

あたしは見てるのも、なんか神楽さんを待ってるみたいでどうかなって思ったから、一人でお店を出た。

徒歩で帰れる距離だけど、暗いから電車で帰るか…。