「ん!バッチリよ、明日香。可愛いじゃない。こりゃ、モテるわよ~♪」

「ねぇお姉ちゃん。あたし、行くなんて一言も…」

「だぁいじょうぶ!いい人たちばかりだから」

あたしの言葉を見事に遮ってお姉ちゃんがそう言う。

「いや、そうゆう問題じゃないと思うんだけど……」

半ば強引に連れ出されたあたしは、完全にお姉ちゃんのペースに巻き込まれてしまったみたいだ。

「ほら、もうすぐだから笑って笑って」

しばらく歩くと、1件のお洒落なお店に着いた。

「いらっしゃいませ。2名様ですか?」

「いえ、20名の団体で予約していた者です」

お姉ちゃんが答えるとウェイトレスさんが、営業スマイルであたしたちをその席まで促す。

「では、ごゆっくりどうぞ。」

「ありがとうございます。

みんな、遅れてごめんね!」

「おっ、来た来た!あ、隣の子は例の妹ちゃん?」

「っ!!!!!?????」

どちらかと言えば、かわいいという方が似合うその上目遣いに少し特徴的な声…。

あたしはお姉ちゃんを連れ戻した。

「あ、あたし、聞いてない!!!」

「?何が??」

「人の顔見ていなくなるとか、ちょっとひどくない?笑」

そう言ってあたしたちの会話に割って入ってきたのは紛れもなく、あの、国民的アイドルJADEの神楽和仁さんだったのだ。

「あー、ごめんね~。和。改めて、コレあたしの妹明日香ー。可愛がってあげてね」

!!

なんで、紹介してんの!

ていうか、あたし神楽和仁さんがお姉ちゃんの同級なんて聞いたことないよ?!

「んー、さっき俺のこと知ってるっぽい反応してたけど、一応…神楽和仁です。改めてよろしくね、明日香ちゃん?」

「…はっ初めまして……林明日香です。」

しどろもどろに答えるあたしに、お姉ちゃんと神楽さんが吹き出した。

「明日香、緊張しすぎね笑」

いやいやいや、そりゃ緊張もするでしょうよ!!

目の前に国民的アイドルがいるんだよ?

平静でいられる方がおかしい!

「あっ、ちょっと電話出てくるから二人先戻っててー。和、あとよろしくね」

「おう!
じゃあ、戻ろっか明日香ちゃん。」

「…ぁ、は、はい……。」

あたしは、頭が回らないまま神楽さんについていった。

「あっ、今俺プライベートだから、しー、ね?」

と、さっきより小さな声で唇に人差し指を当てて言った。

「!!そんな、言いませんよ」

あたしは声のボリュームを合わせて全力で否定した。

すると、神楽さんはふふふ、と笑った。

「そうだよね。明日香ちゃんはそんなことする子じゃないもんな?」

「絶対言いません」

「ふふふ。分かってるよ。」

そうやって笑う神楽さんは、TVで見る神楽さんとは違う雰囲気だった。