黙ったまま歩く。


その内
目的地には着いて、黙ったまま戻る。



「「今日こそは、お礼をっ!!」」



そういつも思っているのに
中々言えない。





「「ありがとう」」





たった5文字が難しい。

もどかしい。



きっと言えたって
それは恥ずかしくて

くすぐったいのだろう。





小さな彼女が小さな歩幅で
遠退いて行く。


追いかける理由もなく
勇気もなく、

ただひたすらに
見つめていた。




振り向いてくれるかな、

こっち見てくれるかな。




そんな期待を半分詰めて
俺は彼女に背を向けた。