彼女の頬は
まだあの頃と同じ。


薄いピンク色で
可愛らしいえくぼが踊っている。



「…覚えてる」

本当に
蚊が泣くような声で言った。

学校のみんなが今、
私を見ても気づかないだろう。


"ぶりっ子"ではない私を、

私に、

気づく人はいない。





この先、
誰もあの頃の私と今の私。


二人の私を知っている人は
いないだろう。







「やっぱり、覚えてるよね?」


やはり
雨は降り続いている。





「…うん。」










あの頃の私、

今より

ずっと強かった私。






いいや、

何も知らなかったから

強かった。






「うん

覚えてる。」