彼は 会えば会釈するくらいだった。 別に 話すこともしないし、 笑い合うこともない。 元々、 話すことなんてほとんどなかったけど…。 彼は 塾に入ったらしい。 大きい人だから目立ってて よく噂を聞く。 難関高校に何人も入れているような 有名な塾らしい。 でも、 彼は他にも塾に通っていた。 勉強に勉強する。 同じ教室にいないから 彼の笑う顔を見なくなった。 「…お母さん。 私、塾に通いたい。」