タイトル



「これ、授業に関係ない
参考書だよね?」




宗太くんの前に置かれた本が
目に入った。


見た感じ、
ある大学の医学部で扱っている本のようだ。






「もしかして…
将来、お医者さんとか?」




本を手に取りながら
聞くと、
宗太くんは右手で口元をぬぐった。





中学生の頃にみた
神影 宗太くんの癖だった。





『そっちは将来何かあるの?』




薄い字で
宗太くんの癖がある字が綴られた。




私も
シャーペンを握る。




『看護師』





将来の夢とか
初めて人に言った気がする。

言うではなく、
書くだけど…。





『がんばれ』






『そっちもね』






私たちは
笑った。


宗太くんは
微笑むって程度だったけど
それで十分だった。
















「笑えて良かった」








ポロッと
口から零れてしまった。





ついでに
涙まで流れた。