「…なんで
母さんを忘れる必要があんの?」



神影くんが
会話に入ってきた。

前のように
声はかすれていた。



チャラ男くんは
焦るように神影くんの元へと寄った。






「…いいお母さんじゃなかったから。」







お母さんは
誰かわからない人といつも一緒にいて、
しょうがなく私を産んだ。


私を産んだあとも
仕事をしながら帰って来ない日は
たくさんあった。


多分、
男の所にでも行ってたんだと思う。







「…」



神影くんは
私たちから離れて行った。


チャラ男くんが付いて行こうとしたが
断られたみたい。


彼の背中を心配そうに
見ていた。





「…渡邉さんってさぁ
まだ、宗太のこと好き?」






私は
固まった。


…まだってなに?

 私が中学生のときの気持ちを知ってるの?

…私、そんなにバレバレだったの?





口をパクパクさせていたら
チャラ男くんに笑われた。



「図星かな?」




ノーコメントを
肯定と受けとめたのだろう。




私は
ほんとに小さく頷くしかなかった。




「…そっかぁ。」







チャラ男くんの顔は
さえなかった。


もう姿が見えないのに
神影くんがいなくなった方をずっと見ていた。



今にも泣きそうな
子どもみたい。







「今日は、いきなりごめんね。

無理矢理変なこと
聞いたりして…ぢゃあね」





結局、
チャラ男くは目線の先に走って行った。