私は
降参した。




「…お母さんって
噂ではぶりっ子ちゃんは父子家庭だって聞いたけど…」


私の噂って
あったんだ。

しかも
家庭状況までバレているとは…。


…そう言えば、
1度だけ可哀想な女子を演じるために男子に話したことがあったような…。







「…お母さんは私が高校生になる前に
死んだの。」



チャラ男くんの顔が
なぜかショックを受けていた。

驚きと悲しさが合わさったような
複雑な顔だった。





「なんで、
そっちがショック受けてるの?」



ちょっと
聞き返してみた。


だけど
チャラ男くんの顔色は戻らなかった。




「…宗太」




「…神影くん?」





「…あっいや…でも、」





「なんなの?
神影くんがなんなの、チャラ男くん?」





私は
チャラ男くんの制服を引っ張った。





「…宗太の親父さんも
受験生のときに亡くなったんだ。

…鳶職でさぁ、
ビルの開発中に落ちて…。」






私は
チャラ男くんから離れた。







「…私のお母さんは
本当に普通に病気で亡くなったんだ。

全然、
いいお母さんなんかじゃなかったんだけど…」




やっぱりお母さんは
お母さんなのだ。


世界でたった一人のお母さんだった。