私は
2階にある教室の前で足を止めた。


一呼吸する。






―コンコン―




ノックしたあとに気づいたけど…、

他クラスに入る時ってノックなんて
誰もしてない。




そんなことは
どうでもいいのだ。




私は早くこれを渡して
帰る!





「失礼しまーすっ。
神影くん、いますかぁ~?」


頭の後ろから声を出した。




教室にいる人、
みんな私を見た。


男子が一人
近づいてきた。





「A組の…
確か、渡邉さん…だよね?

何、宗太に用事?」


ニコニコ
笑顔で茶色い髪を揺らしながら言った。

周りの男子が
「チャラ男」と連呼している。


…すごいあだ名なぁ。


そんなことを
思っていた。





「誰か、宗太知らねぇ?」


「神たんなら図書室じゃない?」


「はー、音楽室だろ?」


「…そーいやぁ、
さっき職員室行くって言ってた。」







私は
満面の笑みでお礼を口にした。



そして、走る。



職員室はこの校舎の1階。




わざわざ入らなくても、
窓から覗けばいるかどあうかはわかる。





そっと
窓を覗いてみたが、生徒の気配はなかった。








「おっ、渡邉。
なんだ、せんせーに用かぁ?」


数学の若い先生だ。

いつも
Yシャツにネクタイの先生。

話し方はテキトーだけど、
黙っていればサラリーマン風。





「せんせぇ~
神影くん、見てないですかぁ~?」