何も考えずに
外に出てしまった。


なんとなく、
自分に付いてくるように歩いてくる彼女。




近くの公園に
寄ることにした。

先にベンチに座っててくれと彼女に
言った。



俺は一度公園を出た。

そして、走る。




コンビニまで
ダッシュ。

軽く
飲み物と食べ物を買った。




そして
また公園まで走る。


小さい背中が
ちょこんとベンチにいた。






「ごめん、
遅くなった…これ…」


買ってきた物を渡す。



「…こっこれ…?」


「…あっ、もしかして
嫌いだつた?」




彼女は首が取れるくらい
首をふった。





俺が渡したのは
『からっきゅー』と呼ばれる
キュウリの漬物みたいなものだ。


飲み物は
BOSSのブラックコーヒー。





とても
学校一のぶりっ子が好むものではなかった。


でも、
俺は買ってきた。







「…神影くんは
私が同じ学校だって知ってた?」



会話が始まった。




「…入学式のときから。」







ぐりんっと
俺の方をみた。







「…ずっと知ってたけど
声、かけるつもりなんてなかった。

…これから先も
そのつもりはないと、思う。」







二人とも
黙った。


外は
もう暗くなっていた。



女の子がいていい時間ではない。





俺は彼女の手を引いて
立ち上がった。





「帰ろう。」





俺自身、駅にようはないけど
黙ったままの彼女を駅へと引っ張った。











「…じゃあ。」



駅の明かりが届いた所で
言葉を発した。


身体の方向を180度変えて、
歩き出した。






「神影くん」

彼女の言葉に止められた。




脚を止める。

でも、
振り返らない。




「…風邪せ、ひいたの?」



俺は
首を振った。




「神影くん。」



俺は
背を向けた。




「私中学生の頃…」








彼女の言葉を最後まで聞かず、
駆け出した。



走り出した脚は
止められない。





壊れた風車、

いや

風が強い日の風車のように
とまることを知らなかった。



まだまだ走ったばかりなのに
もう息があがっていた。