厚い雲に覆われた昼下がり、降りしきる雨を避ける為、近くの神社に非難していた。
人肌のような生温い風が頬を撫でて通り過ぎる。
こんな日は嫌な事が起こる…そんな気がした。
……ザー……。
雨音だけが世界を支配していた。
何だか気持ち悪かった…。
雨の中、突っ切ってでも帰るべきだったかもしれない。
そんな事を考えていると、ふと人の気配を感じる。
見れば、鳥居の下に傘もささずに立ち尽くす少女の姿があった。
「……」
小学校の低学年ぐらいだろうか…?
無言のまま、こちらを見つめている。
と、次の瞬間、少女はこちらに歩み寄ってきた。
近くまで寄ってきて、俺は違和感を覚える。
「?」
少女を観察してみる。
そこでようやく俺は気付いた。
少女の姿が透き通っているのだ。
つまり、目の前の少女は…幽霊!?
だけど、何故だか恐怖は感じなかった。
「……」
少女は俺の前に立つと何事か口を動かした。
だけど、その口から音が発せられる事はなかった。
必死に口を動かしている。
俺の表情から聞こえていない事がわかったのか、身振り手振りを交えてくる。
俺も耳を寄せて聞こうとするが、やはり何も聞こえない。
「悪ぃ…何も聞こえねぇんだ」
首を横に振る。
少女は腕を組んで、首を傾げている。
どうやら、どうすれば伝わるか考えているようだ。
「…!」
おや?
何かに気付いたみたいだぞ。
少女はポケットの中を探し始める。
スカートやポーチの中に手を突っ込んでいた少女が目的の物を見つけたようだ。
パーッと表情が明るくなる。
取り出した物は携帯電話だった。
嫌な予感がする…。
少女は携帯をプッシュし始める。
ま、まさか…。
直ぐさま嫌な予感は的中した。
ピリリ…ピリリ…。
俺のズボンの後ろポケットから音が鳴り出した。
「う…」
携帯を取り出してみる…。
非通知と表示されている。
少女を視線を送る。
少女は携帯に耳を当てて、こちらを見つめている。
偶然…かな?
そんな訳ない…それはわかっていたのだが、現実から逃避したかった。
通話ボタンを押してみる。
「もしもし…?」
少女から視線を外さないようにしながら電話に出る。
『聞こえる?』
ぐはっ…!
目の前の少女の口と電話がリンクしていた。
間違いない。
目の前の少女からの電話だった。
「ああ…」
『良かったぁ…』
憔悴しきった顔の俺とは対照的に少女は安堵の表情を見せていた。