校内中に響く、チャイムの音。



それを合図に生徒は教室から飛び出して行った。


しかし私は椅子に座ったまま、深呼吸をする。


もうすぐ夏だというのに、湿気で鬱陶しい室内にいるのは私だけになっていた。




「あ、千代」

「桃ちゃん!」




教室を出ていったはずの桃ちゃんがひょこっと室内に顔を出した。



まさか、桃ちゃん!



あんなこと言っても、やっぱり私のことを心配してくれて……。






なんて淡い期待を持ったが、それは見事に打ち砕かれた。





「はやく筆箱探しなよ。じゃ、私部活あるから」




それだけ残してパタパタとシューズの音を立てながら行ってしまった。