城ヶ崎くんの、好きな人…。




その人を思い出して胸が痛んだ。




高梨先生。





「し、知ってるよ……」





俯いて言う私は、城ヶ崎くんの目にどう映ったのだろうか。いつもの、平凡な私が映っているのだろうか。



それにしても、なんでこんなことを聞いたんだろう。



口止め?


教師が好きだから、知られたらマズいから?



いや、それ以前に付き合ってるとか。



想像が膨らみ、その度にチクチクと針が刺さったような感覚に陥る。




「そっか……」

「うん…」





多分城ヶ崎くんも俯いたと思うから互いの表情は確認できない。



静かな準備室に、声が響く。




「いつ、気づいたの」

「えっと…ほ、保健室で、です…」





その時、高梨先生のことも知った。


高梨先生と楽しそうに、嬉しそうに、優しそうに話す城ヶ崎くんを見て苦しくなった。


あの瞳は、恋しているものだと思う。


恋愛経験の浅い私がそう思うのもおかしな話だけど。




恋愛している人がどんな瞳で、相手を見ているのかなんて想像もつかない。




けれど、あれは確かに、他の女の子とは違う瞳で先生を見ていた。