「伊桜ー!とれたかー?」
下からは男子の声。
「あと....もーちょいぃいー!」ボールを取ろうと木にのぼっているあたし。

グラリ

「....ぁ...」蚊みたいなか細い声がでた。
木から落ちていく。木に登っていたあたしを見ていた人達が悲鳴をあげる。

「きゃあああああああっ!!」

........あたし、死ぬのかな...
まだやり残してること、たくさんあるのにな....

段々と地面に近づいている。
死ぬは嫌だ....!

ドシャッ...

「痛っ....くない....?」それにあたし、生きてる。
しかも妙に腰が浮いている気がする....

「うおっ....おっも....」
声がしたから目を開けてみると、知らない男の子の顔。
「うぎゃあ?!」びっくりしたに決まってる!
それでも、何故か胸がドキドキして、苦しくなる。何だろう、このキモチ。
そう思っていると周りにいる女子達がキャーキャー言っている。
「見てみてあの子ぉー!”お姫様だっこ"されてるよぉー!」
「キャー!”お姫様だっこ"ズルイィー!!」
....はい!?おっ、お姫様だっこ?!
「フギャアッ!!」すぐにあたしは男子から離れた。
「んだよー、感謝ぐらいしろよ。助けてやったんだぞ?」
.......いや、あたし助けなんて求めてないんだけど。まぁ、一応言っとくか。
「....ありがとうございましたぁ!」
皮肉気味に言ってやった。
「男みてぇに木なんか登ってサルみたいだな」
...はぁ?!あたし男じゃないんだけど!!

こんな形であたし達は出逢った。