扉を開けて、中に入って寄りかかる。


暫くして階段をトントンと上がって来る音がした。

「…っく。」
その足音を聞いて嗚咽が漏れた。

亮ちゃん…。


わかるよ、足音で。

小学生の私はこの音を毎日待っていたから。

足音は一瞬、私の扉を挟んだすぐ後ろで止まった。

私は必死にワイシャツを噛んで、泣き声を堪えた。

頬に涙がツッと伝った感覚がした。


ギィー…ガチャン


ーーーだけど、やがて隣の部屋のドアが閉まる音がしたーー…


それは、まるで、私と亮ちゃんとの世界が閉ざされたかのような音だった。



次の日から、私は亮ちゃんを避けた。
その次の日も。ずーと。


最初のうちは亮ちゃんも話しかけようとしてたけど、私は無視した。

そうやってるうちに私たちは仲直りのきっかけを失った。