私立、桜ヶ丘学園。
桜が綺麗で有名なこの学園は、もう一つ特徴的な、普通の高校とは違うところがある。
それは…
「きゃー、響様よ!」
「翔太様も一緒だなんて!
今日一日の運を使い果たしたかも〜っ」
「ほんと素敵だよね。
ねぇ、ルウ?」
この女子特有の黄色い声の向かう相手は、限られている。
「別に。
わたし、アイドル科に興味ないから」
そう、アイドル科。
この学園の最大のポイントであるらしい、特殊な学科。
名前の通り、芸能人や歌手、アイドルの人材を育てる学科だとか何とか…
「またまたルウはそんなこと言って〜」
「本当のことだもん」
「そんなんじゃあ、お母さんの夢叶わないよ?」
「ゔ…」
親友に言われて思い出す、お母さんとの約束。
それは、お母さんの母校であるここ…
桜ヶ丘学園を卒業すること。
そして、お母さんはここでアイドル科のお父さんと出会い、恋に落ちた。
それは素敵な出会いだったそうで。
今でも当時のことを幸せそうに話すお母さん。
お母さんは、わたしにも同じ出会いが訪れてほしいって願っていた。
「わたしは…卒業さえできればいいの」
アイドル科の陰になっているこの普通科で。
そう、卒業さえできればいい。
ただそれだけ。

