晴れた日に…

ただいま。


夫が戻った。
そして、開口一番に、

紗江、サロンに生月悠弥連れてったってほんと??

驚いた。
彼と会ったことをもちろん言うつもりはなかったのに。

誰に聞いたの?連れていったわ。

リズだよ。正確に言うとリズの旦那。
どうして黙ってたの?生月と知り合いだって。

夫はサッカー好きだった。
特段シャルケが好きな訳ではなく、
日本にいるときからテレビで代表戦を見たりしていた。

ごめんなさい。言う機会がなくて…じつはあのパーティーの夜に会ったんだけど、
実はエーベルトに救急車呼んでくれたの彼なの。

え?あそこにいたの?
案外目立たないんだなぁ。華がありそうだけど。そして、いい奴なんだね。

そうね。そうじゃなきゃ私、なんもできずにたぶんあそこにぼーっとしてるだけだった。
私、それに。彼がそんな有名な選手て知らなくて…。

生月を知らない?
紗江らしいね。リズが心配してたよ。
エーベルト夫人と何かあったのかって。
紗江はいつも、控えめにサロンに参加してるのに、あのサロンに限っては主役だったって。それくらい生月のパワーは凄かったって。


リズ…
鋭いなぁ。ほんの軽い気持ちだったの。
悠弥くんみたいな子を連れてったら、サロンで夫人の鼻を明かせるかもって。悠弥くん、鼻を明かすどころか私が思ってる以上にに凄い子だったみたい。


夫は驚いた顔をした。

ほんとに知らないのか?
生月はイタリアのスーツブランドのイルマーレデザイナー生月弥生の孫だよ。
そして、父親は元日本代表の生月純弥。
ついでにいうと、双子の妹はイタリアで画家として成功してる。エリート一家の生まれだよ。

そうなの?

なんだか凄いはなしだけど。
納得。

あのオーラ。
物怖じしない、堂々とした雰囲気。

夫人は全て悠弥の背景も、わかった上での
あの、態度なのだ。
私は夫人の鼻を明かしたつもりだったが、もしかしたら、何も知らずにあんな子連れていった。私の無知が夫人に知れただけかもしれないと思うと、恥ずかしかった。

そして、後悔した。


私は悠弥と寝た。
ほんの一夜の事とはいえ、夫を裏切った。
そのことは秘密にしなくてはいけない、
そのことにたいする危機感は全くなかった。


いつか、後悔する日が来なければいいけれど。




なぁ、紗江。
ミーハーなこと言うようだけど、俺も生月悠弥に会いたい。
連絡とって、一緒にゲルゼンキルヘンに行かないか?


え。でも。そんなに親しくないし…

そんなこと言わないで頼むよ。御礼も言いたいし、いいじゃないか。