晴れた日に…

彼女は、松井ユキナ。
私に用事があるというので家にあがるよう促すと、
時間がないからいいという。

そして、彼女が私に差し出したものを見て目を疑った。


それはルージュだった。

ディオールのお気に入りだったルージュ。すこし派手目の赤で、パーティのときは必ずこれだった。


そして、あの日に無くした。

あなた、誰なの?
私、これ凄い人から預かったのよ。

松井ユキナは明らかに嫉妬の混じった目をした。
私もなるべくならあの日のことは知られたくない。
身構えた。

誰って言われても…。専業主婦ですから。

私はドアを閉めようとした。

待ちなさいよ!マニエルノイアーから預かったのよ!

は?


私は耳を疑った。
生月悠弥の、名前が出てくるかとおもったら、

そのドイツ人ぽい名前には全く聞き覚えが、なかった。


やだ、だれかわからないの?

松井ユキナの問いに私はうなづいた。

これは、ケルンのパーティで無くしたわたしのルージュです。
でも、その方は存じ上げません。どうやって私に辿り着いたのか教えていただけますか?

私に松井ユキナは、答える。

ノイアーもケルンで拾ったって。
高価な物だから返してあげてほしいって頼まれたの。
向こうは、
棚部紗江って名前まで知ってたわよ?
住所がわからなくて送ることもできないって。まぁ、私は記者だし、ケルンで日本人でそのパーティに出入りしてるってきいたらすぐ辿り着けたけど。ノイアーは50万もくれたわよ。

松井ユキナは日本に帰るという。ドイツのサッカー担当だそうで、次の日半分はドイツにいるそうだ。
名刺を置いていった。