「慧ちゃん。あのね。私、転校するんだって。」

彼女は、そう僕に告げた。
生まれた時から知っている
近所に住む幼なじみの少女は長いまつげを伏せ目がちにして
悲しそうな顔をしていた。

「えっ?転校するって何処に?」

僕は君にそう尋ねた。
まだ小学生の僕には場所を聞いたからと言って
そこが遠いのか近いのかはわからない。
けれど、それでもお母さんに聞けば、もしかしたら近くかもしれない
と思った。

しかし、近くかもしれないという僕の思いとは裏腹に
彼女から返ってきたのは反対の言葉だった。


「―――ここから、遠い街何だって電車に乗って…飛行機に乗って…たくさん時間がかかる場所何だって。だからね。だから、慧ちゃんにはもう会えないんだって。」


そう言う彼女には、大粒の涙が溜まっていた。