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――葵がまた改めます、と屋敷を出て行って。
梓は愁也を見た。

「何とかしてよ、愁也」

「えぇ~?こういうときは余計なことをしないほうが、案外丸く収まるものだよ」

正直蓮也には関わりたくない。
昔よりだいぶ丸くなったとは言え、ソリが合わないのは相変わらずだ。

「後にも先にも、あんな魔王を好きになってくれる女性なんて葵ちゃんしか居ないよ!何とかしてくれないなら……」

梓のその目が怖い。

「もうキスしないから」

……。


「何それ、拷問?それとも新手の色仕掛け?」

天井を仰いで、愁也が呻くように呟いた。

「だって愁也なら何とかしてくれるでしょ?」

「――その上目遣いを止めろ。やっぱり色仕掛けか」

どうせ最後には、落ちるんだけど。
上に向けていた視線を、ちらりと妻へ戻して。
愁也は艶めいた瞳で彼女を見つめた。

「もちろん、見返りはあるよな?……前払いだよ」

「シィが見てる~!」

近づく彼の顔を片手で押しのけて、梓が頬を赤くする。


「仕方ないな、仰せの通りに。可愛い奥さんのためだ」

愁也が立ち上がった。