向かいあって、指輪を嵌められ、彼にも同じように嵌める。
これもいつのまに用意してたのかな。
婚約指輪の時も、ドレスの時も思ったけど、なんでこんなにサイズぴったりなんだ……!


「誓いのくちづけを」


私は固まった。

「人前で、するの?」

小さな声で愁也に問う。
心の準備が整ってなかったせいか、ちょっとだけ躊躇する。

ほっぺたとか額じゃだめ?
いくらイタリア帰りでも羞恥心てものがあるんだ。

「人前でするから誓いのキスなんデショ。イタリアではしてくれたじゃないか。人前で二回も」

愁也が私だけに聞こえる声で囁く。

に、二回??

酔っていた時のコトを覚えていない私は、その言葉に動揺した。
愁也がベールを上げる。

「もう観念しろよ、梓」

……それは悪役の台詞だぁっ!!

軽く唇が触れて。
すぐに離れたことに油断したら、次の瞬間には、強く引き寄せられた。

「――ん――っ!!」


愁也の唇が深く深く、私に重ねられる。


何してんだーっ!


途端に光るフラッシュと、歓声と、一部怒声と、父の嬉しそうな声。

「愁也君、愁也君、こっちにピース下さい!ハイビジョンでばっちり収めとくから!」

こらこらこらああっ!!

本気でそのまま押し倒されそうな危機感を感じて、できる限りの力で愁也の肩を押し戻そうとした。

「ちょっと、愁也っ」

く、結婚式ってこんな鬼気迫るもんだったっけ!?

「せっかくの晴れ舞台だし、皆に俺達のラブラブっぷりを御披露したいなと」

そんな過剰サービスはいらん!!

けれど腕力でも、その色仕掛けでも勝てるわけも無く、私は散々暴れたあげく諦めて瞳を閉じる。
異常に盛り上がるチャペルに、異様に盛り上がる招待客。
色んな喝采を浴びながらの結婚式――。