私達の背後から足音が近付いて、その人の手で大きな花束が墓石に載せられた。

「良かったな、姉さん。あのフラッフラしたダメ男にも見る目があって」

振り返れば、カイ兄が苦笑して、私達を見ていた。

「カイ兄!!帰国してたの!?」

「そこの有能な捕獲人にとっつかまった。よくあんな奥地まで探させたな」

カイ兄の言葉に愁也が笑った。

「梓の大事な日にあなたを呼ばなきゃ、後で恨まれそうですからね」

そ、そういうことですか。
カイ兄は嫌そうに言う。

「全く、てめぇは出来過ぎで嫌になるね。あのクラゲ親父も思わぬ拾いものをしてくれたもんだ」

クラゲ親父ってうちの父のことかしら。
確かにフラフラぽよぽよしてるけどさあ。

「姉さんがアイツと結婚した時には、ほんと奴を東京湾に沈めてやろうかと思ったけど。まあ姉さんそっくりな梓を作ったことだけは偉業だよな」

カイ兄から物騒なセリフが飛び出して。
叔父のシスコンぶりにちょっと引く私。


「カイ兄、気持ち悪い」

「お前はそゆとこも姉さんそっくり」

えぇえ?

「わ、私のママのイメージって、優しくて儚げで可愛いって感じなんだけど」

「確かにイイ女だったけどな。口悪くて、食い意地張ってて、猪突猛進て感じだったけど」

……え?

愁也が苦笑した。

「梓そっくり」


えええ~??マ、ママ??

カイ兄が墓石を眺めて、長い溜め息をついた。


「……俺の大事な女は、みんな他の男に持ってかれるんだよな」


淋しそうで、でもどこか嬉しそうな声に、本当にひねくれてんな~と思って。

「ありがとね、カイ兄」

その背中に抱きついた。


「あ、梓また胸デカくなっただろ」

「この馬鹿!!海まで吹っ飛べ!!!」


姪っ子からの愛溢れる鉄拳が飛んだのは、言うまでもない。