喉を押さえていた彼だったけれど、ふとその手を止める。


「あ、もしかして、意識してんの?」

クスリ、と笑みを含んで、愁也が私を見た。


そ、その流し目を止めて下さい!!


「ち、違うもん」

挙動不審すぎる、私。

彼はさらになんだかフェロモン的な異様な色気全開で私を見つめた。
しまっとけ、そんなもん!!

そしてその唇が、ゆっくり笑みを形どる。


「そぉ?
……あんなに愛し合った仲なのにな」


ーー!

ぼんっ!!っと。

顔から火が出るのがわかった。


いやもう大爆発?


とにかく、私の顔は今真っ赤だろう。


「な、な、何を、何を言ってるのよぉお!?」

しどろもどろな私を見て、心底可笑しそうな愁也。

ああまた、この笑い上戸が発動されるの?そんなのごめんだ。


「あ、愛なんか微塵もないくせに!」


咄嗟に出た私の叫びに、
ふ、と愁也のその目が揺らいだ、気がした。


図星かよ。

んで、そこで黙るか。


……却って傷つくじゃん。

……。

!?
いやいやいや、傷付かないデショ!?

気のせいよ、梓!
気をしっかり持てぇえ!


「梓、変な顔」

「すみませんねぇ!!」


うっかり乙女になりかけたわ。
イケメン効果、恐るべし……。


私はドキドキ早鐘を鳴らす心臓を押さえて、愁也から目を逸らした。


くそ、私の心臓飛び出したら、アンタにしまってもらうからね!