「というか、何故“教育理論”?……まさか」

透也が私をマジマジと見た。

よし、ご期待に添ってやろうではないか!

「だって私、教育学部だもん」

「嘘だあああっ!!!」

あぁん!?何よその反応!


透也は青ざめて言う。

「他人に向かって花瓶を投げるような女が先生とか有り得ない!」

「はあ!?そんなんちょっぴり可愛い個性だろ!!私は生徒に大人気の梓先生になるんだから」

絶句する透也の向かいで、愁也も無言で目を伏せた。

おいこら、どーゆー反応よ、阿呆兄弟!!


「ちなみにマキも同じ学部だからね?」

「有り得ねぇえっ!お前ら前途ある子供達をどうする気だ!!」

変に汗だくの透也が叫んだ。
こら、愁也まで何故目を逸らす!?失礼な奴らね!

「まあとにかく、レポートが書けるなら私は構わないよ。ねぇ、愁也」

隣に座る愁也の顔を見上げて、私は小首を傾げる。
彼は顔を片手で押さえて、指の隙間から私を見下ろした。


「そのおねだりモードを止めてクダサイ。……何でも聞きそうになるから」

おや。

愁也の唐突なデレに、私はますます顔がニヤけて、

「何でも聞いてくれるの?」

調子に乗って言えば。


「いいよ。だけど……見返りは貰うよ?」


愁也のその色気に満ちた微笑みと、顎にかかる手。
唇が近づいた、瞬間、

「なあ、俺の存在忘れてませんか」

透也の不機嫌な声がした。

ありゃ、忘れてた。

「嫌なら帰れ」

あ、愁也は確信犯だな。