遡ること、1時間程前。

 半ば無理矢理な感じで一緒に帰路に着き、不機嫌なヒサギちゃんをどうにか言いくるめて本屋に誘い、ゲーセンへと誘い……俺的には楽しく且つ健全な男子高校生のある日の放課後ってヤツを提案してみたつもりだった──ゲーセンに着くまでは。

 駅前のアーケード街にある、少し寂れたゲームセンター。

 目新しい機種は無いけど、雰囲気が好きで時々立ち寄る場所だ。

 程々にタバコ臭い店内に入って直ぐの所に、UFOキャッチャーが数台並んでいる。

 余り得意では無いけど、好きなマンガのフィギュアがあったりすると、チャレンジしてみることもある。

 景品を獲得出来た事はまだ1度も無いけれども。

 そんなUFOキャッチャーを横目に歩みを進めて行くと、メダルゲームコーナー前にある両替機を他校の制服を着たガラの悪そうな連中が叩いたり蹴り飛ばしたりしていた。

 あの両替機、時々硬貨が詰まるんだ。
 それを知らず、店員を呼ぶ事もせず、ガタガタと両替機を揺らしている。

 何とはなしに店内に視線を巡らせても、近くに店員の姿は無い。

 親切心で声を掛けようとも思えない連中の横を通り過ぎた時だ。


「──お前、七中の櫻間だろ」


 ズボンのポケットに手を突っ込んで、やや後ろの方で傍観していたヤツが突然話し掛けてきた。

 俺が思わず足を止めて振り返ると、俺の後ろに居たヒサギちゃんも同じく立ち止まっていた。


「櫻間? コイツが?」

「櫻間って言ったら、条南高の不良ぶっ飛ばしたってヤツだろ? 本当にコイツかよ?」


 口々に信じられないという様子で俺とヒサギちゃん──むしろ俺をジロジロと見てくる。