「ヒサギちゃんは、卒業したらどうするか決めてる?」
「別に……」
「俺さ、美容師目指すんだ」
「…………」
「これといってやりたい事が無いなら、俺と一緒に美容師目指そうよ」
「はぁ!? そんなん無理に決まって……」
「決めつけちゃ駄目。この手で、沢山の人を笑顔にしたり、キレイにする魔法を掛けるんだよ」
「……っ、ははっ、なんだよ、魔法って」
曇った表情は一転して、ヒサギちゃんは笑い出した。
恥ずかしいことを言ってるのは重々承知だ。
けど俺は、小さい頃からそんな風に思って美容師という職業に憧れていたんだ。
「いいじゃん。夢は大きくファンタジックに、だよ」
「お前って、時々変だよな」
そう言ってヒサギちゃんは、凄く柔らかな笑みを浮かべた。
──瞬間、俺の鼓動は一際高鳴り、ヒサギちゃんから目が離せなくなった。
煩く鳴る鼓動以外、何も聞こえない。
そんな錯覚すら覚えて……。


